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はらぺこぐんだん2~殴りBISの破砕日記~

7章




7章
【絶対的強者】




《鉱山町ハノブ》


「ジグ、こっちだ」

輝翼を使ってハノブからアリアンへ飛び立とうとした僕を
クランツは引きとめてどこかへ案内する

MAPを見るからに
クランツの進行方向はアリアンとは逆である

「どこに行くの?」

僕はまだあまりこのゲームの事を知らない

もしかしてこの先に近道でもあるのだろうか


「ほら、もうすぐだ」

クランツは1人のNPCを指差しながら歩き続ける

クランツに指を指されたNPCは
ほかのNPCと比べ派手なローブのようなものを羽織っており
その手には杖が握られていた

まるで魔法使いのような風貌である


僕たちがそのNPCに辿りつくと
クランツはそのNPCに話しかける

「すまない、オアシス都市アリアンへ行きたいんだが」

クランツの声に反応すると
そのNPCは此方へ向きなおり杖を地面にトンッと付く

「了解しました!お二人ともスフィアーをお持ちのようなので
 料金はスマグウィザード協会が負担させて頂きます!」

比較的美人なその魔法使い・・・いや
頭の上に【協会ポーター】と出ているのでポーターと呼ぼうか

そのポーターはそう言うと
地面につけていた杖を高々と掲げる

すると

透明に近い星型の光と
黄色・青・緑・赤などの色が少しまざった
光の粒が足元から僕たちを旋回しながら包んでゆく

そして僕たちの全身を包み終えた時

《転送中》

という文字が目の前に浮かび上がる


3秒もしないうちにその文字は

《転送完了》

という文字に変わり
全身を包んでいた星型の光は

最初に発生した時と逆の動きで消えてゆく


そして光が完全に足元まで到達し消えた頃には
僕の目の前には知らない景色が映し出されていた


目の前には大きな門があり
その左右には西洋の鎧に身を包んだ兵士が1人づつ立っている

そしてその門の上には

《オアシス都市アリアン》

光輝く大きな文字でそう書かれていた


「な?あの翼で飛ぶよりこっちのほうがいいだろ?」

ニカっと笑いながらクランツが親指を立ててくるが
な?と言われても僕は何も聞いていないんだが・・・

「う、うん・・・」

とりあえず適当に返事をしてしまうと
僕たちは門をくぐって街へと入った


ガヤガヤ・・・


街へ1歩入ると
そこはオアシス都市と言うだけあって
多くのプレイヤーやNPCで活気に満ち溢れていた

道の左右には市場を連想させる露店が立ち並ぶ

露店は古都ブルンネンシュティグにも多くあったが
こちらの露店は古都のように、かしこまった作りではなく
開放感のある感じになっている


各所に建っている建物も
石造りとなっており、どれも白くて四角い

古都の古風な作りもいいが
こちらも捨てがたいといった感じの良い雰囲気を出している


「いつ来てもアリアンは露店が多いな」

うれしそうに周囲の露店を見回しながら
クランツは生き生きとしている

この街の雰囲気がそうさせているのだろうか
僕も何だか心躍る気がしている

「なぁ、ジグ!露店を見て回らないか?」

目をキラキラして顔を近づけてくるクランツに
僕は多少たじろぎながら答える

「ち、近いよ・・・まぁいいと思うな、ここなら
 結構情報も集まりやすそうだしね」


僕の言葉を聞いて
クランツはハッとしたような表情をする

「そ、そそっ、そうだなっ、情報集めには丁度いいと思ってさ~ハハハ」

頭をかきながら
横目でチラチラ僕を見ながら苦笑いをしている

(目的を忘れてたなこの人・・・うん)


苦笑いする僕を見て
クランツは目的を忘れていたことがバレていないと思ったのか
ホッとしたような顔をすると、近くの露店に目を向ける

「お、おぉ!あの剣いいなぁ」

クランツの目線の先の露店には
戦士であるクランツが持つに相応しそうな大剣が陳列されていた

クランツはすぐにその露店の剣を
色々な方向から、目を輝かせながら眺める

「いいねぇ~、輝きが違うねぇ~」

嬉しそうに笑顔で剣を眺めるクランツにつられて
僕も自然と笑顔になってしまう


「おう兄チャン、安くしとくから買っていかねえか?」

露店の主であるおじさんが
ニコニコしながらそう言ってきた

「マジっすか!おいくらですかね!」

嬉しそうに、無駄に大きい声でクランツは返事をする

「ん~、希少価値の高いユニークアイテムだし大分オマケして
 2000万Goldかなぁ?アリアンで一番安いと思うぜ!」

クランツはそれを聞くと
笑顔が無くなり、今度は腕を組んでうんうんと唸る

「2000万・・・うーん、2000万かぁ・・・」

チラチラ

「2000万ねぇ・・・」

チラッ

「ん?どうしたの?」

大方予想はついているが
唸りながら僕の方をクランツがチラチラ見てくる

「い、いや、その・・・さ」

「・・・お金が足りないの?」

クランツは俯きながら小さく頷く


「そんなことだと思ったよ・・・と言うか僕お金持ってるのかな」

僕は所持金を確認する為
ACのメニューからインベントリを選び開いてみる


__________

所持金 20億Gold
__________


「うん、なんかすっごい持ってるみたい」

それを聞いたクランツは
僕のACを覗きこんでくる

「ふむ・・・って、えええええ!大金持ちじゃんか!」

「え、そうなの?」

そもそも僕はこのゲーム内の通貨の価値を知らないから
20億Goldがどのくらなのかも分からない

僕のACを見て興奮しているクランツを見るに
相当な金額なのだろうが・・・

「20億Goldっていえば、ACに所持できる上限金額だよ!」


所持金額の上限・・・
そうとうな額なんだろうな

「とりあえずこれだけあるし、僕が払うよ」

僕はACを操作し
Goldと表示された場所をタップする

すると「使用する」という項目が出てきたので
僕はそれをもう一度タップした


するとACの5cm程前に
10Mと書かれた金貨が2枚出現した

僕はそれを露店主に手渡そうとしたのだが


「おい、そこのキミ、待ちたまえ」

少しニヤけ顔をしていた露店主にお金を手渡す直前に
何者かに手首をつかまれて止められた

すると

「ゲッ、なんだ君は!邪魔をするんじゃない!」

露店主はあからさまに動揺しながら
僕の手をつかんだ人物に怒鳴りつける


「あの・・・」

僕は手首をつかまれたまま
その人の顔を見つめる


全身に真紅の鎧を装着しており
その鎧の周りには、赤い光が漂っている

髪も鎧と同じく真紅のストレートで
その長さは肩甲骨のあたりまで伸びている


顔はものすごく整っており
装備には似つかわないその美貌に
僕は少しドキドキしながら見とれてしまっていた


「あぁ、悪いね君。私は【紅覇】(くれは)という者だ
 悪いがこの取引、少し口を挟ませておくれ」

「は、はぁ・・・」

僕は半信半疑で返事をしながら
掴まれた右手が放されるのを少し残念に思った

「紅覇!お前また商売の邪魔をしにきたのか!」

露店主は激怒に近い状態で
紅覇を睨みつける

それを紅覇は鼻で笑うと

「おや、商売じゃなくて詐欺の間違いだろう?」


詐欺・・・
この露店主は僕らを詐欺ろうとしたのだろうか

「ぐっ、煩い!黙れ!お前には関係の無い事だろう!」

冷や汗を流しながら
露店主は紅覇を指さして怒鳴る


僕がふと気が付いて周りを見ると

何だ何だと野次馬達が
僕らを取り囲むように見ていた

「おやぁ、皆さん聞きましたかぁ?この方は詐欺師だということを
 認めたようですよ~」


紅覇の言葉に
野次馬達は露店主を指さしたり
ざわざわとしながら露店主を見たりしていた

「う・・・解ったよ!もういいよ!クソッ!
 おう兄ちゃん、その剣はくれてやるからとっととどっかいきな!」

そう言いながら露店主は
クランツに剣を投げつけてからACを操作する

露店主がACを操作すると
露店の品等が一瞬にして消える

そして露店主は悔しそうな顔をしながら
早歩きでその場を去って行った


そんな露店主を見送るように僕らは
唖然としながら呆けていると
紅覇が僕の肩をポンと叩く

「危ない所だったな君。あいつはここらじゃ有名な詐欺師なんだよ
 あの剣も本当の価値は500万Goldって所だろうな」

「あ・・・ありがとうございます」

またも見惚れてしまいそうだった為
少し視線をずらしながら僕はお礼を言う


「イヤッフゥゥゥ!」

高い剣をタダで譲ってもらったと思っているクランツは
僕の横で嬉しそうに剣を掲げて喜んでいる


「ふふ、価値なんかどうでもよさそうですね」

僕は思わず笑みを浮かべてクランツを見つめる


「ふむ、君らは信頼関係が硬いようだな。羨ましいぞ」

腕を組みながら
紅覇は僕らを交互に見ながらそう言う


「まぁ色々とありまして・・・今僕が頼れるのは彼だけなんです」

なんとなく僕は俯く


「そうか・・・そうだな、そうしよう。おい君
 私も君たちの仲間にしてくれないか?」

僕の話を聞いていたのか聞いていなかったのか
1人で自問自答をすると、紅覇はそう言いながら詰め寄る


「え、どうしよう・・・まだ僕は君の事を知らないし
 クランツにも聞いてみないと判断できないや」

ものすごく近い紅覇の顔にドキドキしながら
冷静を装ってそう答え、クランツの方を見る

「ん、どうしたんだジグ?あ、そこの姉ちゃんありがとな!」

クランツは満面の笑みで僕たちに寄ってくる

「良かったな、クランツ」

初対面だと言うのに呼び捨てで
紅覇はクランツに微笑む

「おう!で、君の名前は?」

「あぁ、自己紹介がまだだったな」

紅覇はこめかみを人差し指で掻きながら
自らのACを操作してこちらに見せる


「私は紅覇という者だ。一応ランキング2位なんだがな」

紅覇が僕たちに見えるようにACを傾けてくる


___________

名前:紅覇
職業:ヴァンガードキャバリエ(物理ランサー覚醒職)
レベル:342
ギルド:炎心(フレアマインド)
能力:【炎装】【超視】
ランキング:2位
備考:炎心のギルドマスター
___________


「うおっ、マジかよ」

紅覇のACを覗きこんだクランツが
少し興奮しながら叫ぶ

「え・・2位の人ってまだ240ぐらいじゃなかったっけ・・・」

僕がクランツ達と初めて出会った時に聞いた
ランキング1位(だった人)のレベルは確か239だったはずだが・・・


「あぁ、今秘密ダンジョンに行った帰りにサクっと
 適正狩場でモンスターを蹴散らしてきた所なのだよ」

真顔でさらっと紅覇はそう言うが
それで103レベルUPとは・・・恐ろしい人だ

「紅覇・・・さん?すげぇな」

「呼び捨てで構わんぞ?クランツ」

フフッと微笑みながら
紅覇はACを消し、視線を僕に戻す

「で、さっきの件どうするのだ?」

さっきの件・・・仲間にするかどうかか


「クランツ、紅覇さんが仲間に入りたいそうなんだけど
 どうしようか?僕たちにはやることもあるし、それに・・・」

僕たちは運営に目を付けられている
紅覇さんも関われば目を付けられるかもしれない

そうすると迷惑をかけてしまう事になる

「まぁ悪い人じゃなさそうだし、俺らの事情を話したうえで
 決めるってのはどうだ?」

「・・・わかった」

僕は話す前に、他言無用を約束してもらったうえで
今までの僕らの経緯を紅覇に話した

_______
___________
_______


「・・・ふむ、面白そうだな!益々君たちについて行きたくなったぞ
 それに1位がジグだったとはな、灯台下暗しだな」

なんとなく紅覇の反応は予想が付いていたが
ここまで積極的に来るとは思っていなかった


「でも、運営に狙われるかもしれませんよ?」

僕は少し俯きながら紅覇に言う

「叩き潰せばよかろう?私があんなヘナチョコ連中に負けるとでも?
 それにジグ、君が居ればまず負けることはあるまい」

「う・・・そうですが」

僕は言葉に詰まってしまったが
紅覇が言う事ももっともであった

紅覇は実力でここまでランキングを上げてきたプレイヤーだ

そこらのプレイヤーやモンスターでは
歯が立たないであろう

それは運営も然り


いくら運営と言っても
システム上の都合で、強さにも限界がある

本気でプレイしてきたプレイヤーの実力は
目を見張るものがある

それはLvが400以上高い僕でさえも
負けてしまうのではないかと思える程である


「いいんじゃないか?本人がそう言ってるんだから」

僕が真剣に悩んでいる横で
あっけらかんとそう言ってのけるクランツ

「本当か!?私はうれしいぞ!」

「あっ、えっ?」


嬉しそうにしながら紅覇は
いきなり僕に抱きついてくる

鎧が当たって痛いけど・・・嬉しい


「・・・ッ!じゃなくてっ!」

僕が変な思考から戻ってきて
振り払うようにそう言うと

「ん?どうしたのだ?」


紅覇が僕から離れる

少し残念に思いながら
僕は紅覇に聞く

「本当にいいんですか?」
「いいに決まっているだろう!」

少しカブせ気味にそう言われた

「ははは、面白いヤツだな紅覇は」

「そうだろう、そうだろう」

笑い合うクランツと紅覇を見て
僕は考えているのがバカらしくなり一緒に笑った



そんな僕らを
建物の陰から、先程の詐欺商人が見ていた・・・

「聞いたぞ・・・運営に報告してやる、ふはは」


_______
__________
_______



僕たちは近くの冒険家協会へ入り
設置されていたテーブル付きの椅子に座り談笑していた

主に紅覇の強さの秘密等を教えてもらったりしたのだが

彼女の強さは能力による所が大きい

【炎装】【超視】
この2つの能力のうち【炎装】のほうは初期能力であり
【超視】のほうは

秘密ダンジョン:デビルアイの巣窟

で、報酬で手に入れたそうだ


秘密ダンジョンでの能力の取得確率は0.34%であり
紅覇は恐ろしく運がいいと言える


肝心の能力の中身はと言うと、こんな感じだ


【炎装】
武器や鎧・全身のありとあらゆる場所に炎を纏う事が出来る
炎は自由に質を変える事が可能で、盾にする等も可能である
紅覇は空中に固定して足場にしたりと、応用して使っている
この炎に焼かれた者は火ダメージを受けると共に出血状態となる

【超視】
縦3メートル・横3メートル・高さ3メートルの範囲内全てを
目で見る事が出来る。その範囲の真ん中に入った場合
範囲内であれば360度目視する事が可能
また、この範囲は体積的にみる事ができ、引き延ばす事ができる
例)縦27メートル・横1メートル・高さ1メートル等
紅覇はこれを応用する事で、長距離から敵を仕留めたり
近距離では付近の全ての方位の敵からの攻撃に対応したりできている




ただ、これだけの能力があったとしても
プレイヤーとして才能がなければ弱い

紅覇はその才能も持っているため
ランキングにおいて2位の座に座っているのだろう




「でもさ、俺達について来るって事は、ランキング上位を
 放棄しちゃうようなもんじゃないのか?」

テーブルに置かれた飲み物を啜りながら
おもむろにクランツはそう言う


「ランキングなんてどうでもいいのだよ、私はただ
 興味を惹かれたものをとことん追求したいだけだからな」

飲み物をストローで掻きまわしながらそう言う紅覇の目は
なんとなく少し寂しそうに見える


「何か理由があるように僕には見えるけど
 今は聞かないでおくよ・・・」

僕の言葉に、紅覇は少し驚いた表情をするが
すぐに微笑む

「・・・ありがとう」


話もひと段落し
そろそろ冒険家協会から出て
情報を集めようかと僕たちは席を立とうとした


その時

「っ!」


カキンッ


突然紅覇が槍を出したかと思うと
僕の頭の横へそれを突き出す

「なっ!」

僕は一瞬紅覇が僕を攻撃してきたかと思ったのだが
すぐにそれは違うと知った


僕の頭の横に突き出された槍に弾かれて
短剣のようなものが床に落ちたからだ


「ヒュ~、やるねぇ!僕の【隠密】で気配を消した
 スローインダガーを弾くとはね」


方角的に、この建物の入り口の方から
僕らを少々小馬鹿にするような声が聞こえてきた

すでに身構えていた紅覇に従い
クランツと僕も武器を取り出しそちらに身構える


「お前・・・何者だ」

紅覇が入口を睨みつけながら警戒する


すると、死角となっていた入口の陰から
黒いマントを羽織り、黒いハットを被った
銀髪の男がゆっくりと入ってきた

手には先程の短剣と同じものが握られている

「ふふ、焦るなって、まぁどうせデリートされるキャラクターに
 名前を名乗ってもしょうがないだろうけど、名乗らせてもらうよ~
 僕は【EM黒虹】、君達を葬る者の名前さ」

帽子を抑えつけながら
やたらと格好をつけてそう言うEM黒虹

というか黒虹(くろにじ)って、センスを疑うんだが・・・


「CEMジグ・ヴェルディと違約者を情緒した罪で貴様ら2名を
 このEM黒虹様がデータごと抹消してやる」

EM黒虹は短剣を逆手に握りなおすと
投擲する体制に入る

そして


ヒュパパッ

【サイレント・ホーミング・スローイング】


あさっての方向へ数本の短剣を投擲するEM黒虹


「へっ、どこに投げてるんだ」

クランツはそれを見て鼻で笑う

「危ない!」

パパンッ

【ツインバレット】


僕は咄嗟に2丁の拳銃をホルスターから抜き
クランツの目の前に向けて発砲する


ガギギンッ


あさっての方向から、気道を一気に変えて
クランツの眉間へ到達しようとしていた2本の短剣を
僕の銃弾が撃ち落とした


だがEM黒虹が放った短剣は全部で4本

残り2本は紅覇に向かって行ったはず


僕はおそるおそる紅覇の方を見たが
それは杞憂だったことを知り、ほっと溜息をつく


「私にこんなまやかしが効くと思うか?」

そこには2本同時に槍で撃ち落とした紅覇がいた


「ふふっ、そうでなくちゃ面白くない」

EM黒虹はニヤリとしながら
少しづつ近寄って来る


「ジグ・・・サンキュな」

僕は小さく頷きながらもEM黒虹から視線を外さずに
徐々に近づく彼に警戒を続ける

「っは!?」

だが一瞬油断してしまった隙に
EM黒虹が視界から消えてしまった


カァン

すると僕の右方向から
甲高い音が聞こえてきた

「私にはお前の攻撃が見えている」

紅覇は、前を向いたまま槍で後ろからの攻撃をガードしていた


短剣を逆手にして能力の隠密を使い
背後から攻撃を仕掛けたEM黒虹であったが

難なくその攻撃を防がれてしまう


「お前・・・弱いな、もういいだろう」

紅覇はガードしたままの体制から
槍を押しだす


「ぐっ、何だコイツはっ、一般プレイヤーのクセに
 何故俺の攻撃を見切ることができるんだっ!」

冷や汗をかきながら
EM黒虹は距離を取ろうとバックステップする


だが


「良い能力を持っているのに宝の持ち腐れだな
 能力はこうやって使うもんなんだよ。【炎装】【超視】同時発動
 応用必殺!【紅蓮大突槍】(ぐれんだいとっそう)!」


ボボボボッ

紅覇の放った巨大な炎の槍がEM黒虹を飲み込んだ


「なあっ!ぐあぁあああっ!」

8742
8001
8224
8639
8125

その巨大な炎の槍は、5連続でEM黒虹にダメージを与えると
まるでそこにあったのが嘘のようにパッと消えた


「EMである僕が・なぜ・・だ・・・」

EM黒虹はそう言いながら
徐々に薄れていき、消えた


「つ・・・強い」

僕は思った事をつい口に出しながら
紅覇に見とれていた


【紅蓮大突槍】
この技は【超視】で作りだした視覚空間に
【炎装】で炎を纏わせるという、紅覇だからこそ出来た離れ技だ
普通なら思いつきもしないような技を編み出した彼女の力量は
果てしないものがある・・・

イレギュラーな僕を除いて考えれば

プレイヤーの中で彼女は
レベル・能力・実力共に絶対的強者であるだろう・・・



~7章完~






7章おまけ

【サイレント・ホーミング・スローイング】は
EM黒虹が作りだしたオリジナルスキルであるが
実はこれも【隠密】をスキルに組み込んだものであり
紅覇の【紅蓮大突槍】と似通った部分がある
だが性能や威力は紅覇のスキルと比べるとかなり劣る






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